「……あ、あのね、匠君。わ、私ずっと前から匠君の事が好きだったの」
躊躇いながらも、勇気を振り絞って想いを伝える彼女の気持ちがひしひしと伝わってきて。
まるで、相原さんとシンクロしたように、鼓動が激しく鳴り響いている。
一方、告白を受けた渡辺君は、目を大きく見開き固まっていた。
そこから流れる沈黙。
当事者じゃないのに、まるで自分がその場にいるような心境になり、緊張感がピークに達する。
「俺も相原の事がずっと好きだった。だから、凄く嬉しいよ」
すると、頬を赤く染めて、とびっきりの笑顔を見せて答える渡辺君。
予想通りの結末に、私は危うく歓喜の声をあげそうになり、すんでのところで堪える。
……ああ。
人の恋愛で、こんなにも幸せな気持ちになれるなんて。
まるで、自分が成功しような気分になり、心がふわふわして、とても温かい。
それから、暫く二人の様子を眺めていると、不意に渡辺君は相原さんと距離を詰めてきて、顔に手を伸ばす。
まさかと思った瞬間。
渡辺君は熱に浮かされて呆然とする相原さんの唇に、自分の唇を重ねた。
私は咄嗟に身を引き、気付かれないように慌ててその場から離れる。
人のキスを目撃してしまい、我ながら何て無粋なことをしてしまったんだろうと反省しつつも、先程からドキドキが止まらない。
あれはまさに、自分が思い描いていたシチュエーション。
もし自分がああなれたら、きっと今以上の幸福感を味わえるのだろう。
そんな日が、いつか来ることを祈って。
私は期待に胸を膨らませながら、軽い足取りでホテルへと戻っていった。
それから、自分の部屋で相原さんが来るのを今か今かと待ち侘びていると、暫くしてしてから戻ってきた途端。
早速嬉し涙を溢しながら結果を報告してくれた。
私は初めて聞いたような素振りを心掛けて。
一緒になって舞い上がり、その日は日付が変わる頃まで相原さんとずっと恋愛話で盛り上がったのだった。