それからは、あまり発表の内容は入ってこなかった。

早々に自分の番が終わってしまえば、あとは気楽なもので。

中には興味を引くものもあったりしたけど、それ以外は私の思考は明後日の方へと向いていた。



緊張感が緩めば、また昨日の出来事を思い出してしまう。

俊君の顔が脳裏に浮かぶと胸が高鳴り、ゆう君の顔が浮かぶと気持ちが落ち込む。

そんなことを繰り返していると、気付けば時刻はあっという間に正午を迎え、前半組が終了したところで、私達はホテル内にあるレストランへと向かった。


席は自由席で、私と相原さんは窓際の席を選び、既に用意されていた豪勢なランチを満喫する。


「山田さん、発表よかったよ。よくまとまってたし、凄く分かりやすかった!」

プチトマトを頬張りながら、相原さんは私の発表を振り返り、絶賛してくれた。

「ありがとう。結構ありきたりな感じになっちゃったけど、とりあえず無事に終わったからよかった」

私は照れながらも、安堵の表情を浮かべながら、フワフワのオムレツを一口食べる。


まだ半日しか経っていないけど、気兼ねなく話してくれる相原さんとは大分打ち解けてきたと思う。

裏表がなさそうな明るい性格と、割とお喋りな彼女の話はとても面白くて。

一緒にいると楽しく、相原さんのお陰で、始めに抱えてた不安はいつの間にやら何処かへ消え去っていた。


午後は相原さんと渡辺くんの発表があるので、期待に胸を膨らませていると、ふとある疑問が浮かび上がる。


「そういえば、相原さんって、渡辺君と付き合ってるの?」

唐突な私の質問に、危うく飲んでいた水をふきこぼしそうなる相原さん。

「な、なんでそう思うの!?」

「だって、二人とも凄く仲良さそうだし……違うの?」

明らかな動揺っぷりに、期待を込めて私は首を横に傾げると、相原さんは顔を真っ赤にしながら、手に持っていたフォークをテーブルに置いた。