◇◇◇
時刻は、夕暮れ時。
私は少しの気晴らしに、大好きなシリーズの本を読み返していた。
このひと時が、とても落ち着く。
本を読めば、今の状況から離れる事ができるから。
ただ現実に目を背けているだけなのかもしれないけど、また体調を崩すわけにもいかないので、暫く余計なことは考えないようにしようと。
そう思い、ページをめくった時だった。
「加代、起きてるか?起きてるなら、入るぞ」
ドアをノックする音と同時に聞こえてきた俊君の声。
不意を突かれた私は反射的に体が飛び跳ね、思わず読んでいた本を閉じる。
まだ気持ちの整理が全然ついていないので、一瞬寝たふりでもしようかと、そんな考えが脳裏をよぎった。
けど、向こうから来てくれたなら、ここはしっかり向き合わなければいけない気がして、私は覚悟を決めて小さく深呼吸する。
「……ど、どうぞ……」
そして、激しく暴れ回る心臓を抑えながら、私は恐る恐る返事をした。
少し間を置いて、部屋に入ってきた俊君。
丁度、学校から帰ってきたばかりなのか。
学ラン姿のまま俊君はこちらに近寄り、ベッドに腰掛けた。
「体調、大丈夫か?」
俊君は心配そうに私の顔を覗いてくるけど、私は目を合わすことが出来ず、つい視線を逸らしてしまい、無言で頷く。
あれから俊君とはまともに会話をしていないし、こうして二人っきりになるのも始めて。
なので、暫く続くこの沈黙が、非常に重い。
とりあえず、何か話さなければと、口を開こうとした矢先。
突然俊君は重いため息をはき、思わず肩がびくりと反応する。
「あの時は、本当に悪かった。つい、衝動的になって、抑えられなくて……」
それから、視線を足元に落とし、歯切れ悪く謝る俊君に、なんて返答すればいいのやら。
なかなか言葉が見つからず、言い淀んでいると、俊君はそんな私に構わず、今度は力強い眼差しをこちらに向けてきた。
時刻は、夕暮れ時。
私は少しの気晴らしに、大好きなシリーズの本を読み返していた。
このひと時が、とても落ち着く。
本を読めば、今の状況から離れる事ができるから。
ただ現実に目を背けているだけなのかもしれないけど、また体調を崩すわけにもいかないので、暫く余計なことは考えないようにしようと。
そう思い、ページをめくった時だった。
「加代、起きてるか?起きてるなら、入るぞ」
ドアをノックする音と同時に聞こえてきた俊君の声。
不意を突かれた私は反射的に体が飛び跳ね、思わず読んでいた本を閉じる。
まだ気持ちの整理が全然ついていないので、一瞬寝たふりでもしようかと、そんな考えが脳裏をよぎった。
けど、向こうから来てくれたなら、ここはしっかり向き合わなければいけない気がして、私は覚悟を決めて小さく深呼吸する。
「……ど、どうぞ……」
そして、激しく暴れ回る心臓を抑えながら、私は恐る恐る返事をした。
少し間を置いて、部屋に入ってきた俊君。
丁度、学校から帰ってきたばかりなのか。
学ラン姿のまま俊君はこちらに近寄り、ベッドに腰掛けた。
「体調、大丈夫か?」
俊君は心配そうに私の顔を覗いてくるけど、私は目を合わすことが出来ず、つい視線を逸らしてしまい、無言で頷く。
あれから俊君とはまともに会話をしていないし、こうして二人っきりになるのも始めて。
なので、暫く続くこの沈黙が、非常に重い。
とりあえず、何か話さなければと、口を開こうとした矢先。
突然俊君は重いため息をはき、思わず肩がびくりと反応する。
「あの時は、本当に悪かった。つい、衝動的になって、抑えられなくて……」
それから、視線を足元に落とし、歯切れ悪く謝る俊君に、なんて返答すればいいのやら。
なかなか言葉が見つからず、言い淀んでいると、俊君はそんな私に構わず、今度は力強い眼差しをこちらに向けてきた。