「37度8分」

熱にうなされる私の隣で、海斗さんは機械音が鳴った体温計を取り上げた。


「加代ちゃん、君って子は……」

海斗さんは小さく溜息を吐きながら、私に視線を落とす。

「呆れますよね。本当に」

その視線に、私はバツが悪くなり布団で顔を半分隠した。

そんな私の様子に、海斗さんはくすりと笑う。

「呆れるわけないでしょ。加代ちゃんなりに一生懸命考えてるんだから」

そして、海斗さんは体温計をしまい、用意していた熱さまシートを私の額に貼ってくれた。


まさか、知恵熱まで出すとは、本当に自分が情けない。

おそらく、ゆう君と俊君のことだけじゃなくて、研修会の資料作りの疲れも相まって引き起こしたのだと思うけど……。

それだけ、精神的にも肉体的にも疲労していたんだと、この状態になって気付かされる。


「とりあえず、今日一日は何も考えなくていいから、大人しく寝てなよ。今おばさんがお粥を作ってるから」

そう言って優しく頭を撫でてくれる海斗さんに、私はまたもや癒されていく。

それから、その温もりを暫く手放したくなくて、私は思わず海斗さんの服の袖を掴んでしまった。



このひと時は永遠には続かないから……。



来年には、海斗さんは遠い場所へ行ってしまう。

だから、その日が来るまで、今甘えられるなら名一杯甘えていたい。