「あっ、悪い。ビックリさせるつもりはなかったんだ。そろそろ着く頃かなって待ってたんだよ。俺、早川俊よろしくな」


そんな私とは裏腹に、とても爽やかな笑顔で手を差し出してきた青年。

とりあえず、その手を放置するわけにもいかず、恐る恐る握り返す。

「あ、あの……や、山田加代です……よ、よろしくお願いしましゅ」


緊張がピークに達し、なんとか声を絞り出してしどろもどろになりながらも自己紹介出来たのは良かったけど。
最後に噛んで終わった始末。


……最悪。



「ぷっ、おまえ固くなり過ぎ。これから一緒に住むんだからもっと気楽になれよ。俺のことは俊でいいから」


笑うと八重歯が見えるんだ。

そんな事を頭の片隅で思いながら、冷や汗かきまくりの私は一先ず車から荷物を下ろした。


予想外のタイミングで現れた早川君のお陰で、調子が滅茶苦茶狂い始める。

そもそもまだ心構えも出来てないのに、こんな混乱している状態でもう一人に会わなきゃいけないなんて、先が思いやられる一方だ。