すると、険しかった俊君の顔がふと真顔に戻り、私を拘束する腕の力が少しだけ緩んだ。

「お前俺の事、意識してんの?」

そして、驚いた目で尋ねられたことに、更に恥ずかしさが増していく。

「す、するよ。だって、しょうがないじゃん。こんな抱き締められたら、誰だって意識しちゃうでしょ?」

もう、どうにでもなれと。暴れまくる心臓と、全身の熱を放出させながら、私は涙目で訴える。

「……そっか」

なのに、俊君は何故か穏やかな顔付きに変わると、満足げに微笑んできて。頭の中が益々混乱してくる。

そんな戸惑う私には構わず、俊君は私から手を離すと、今度は優しく顎を引き上げてきた。

腕の拘束から解放されたので、逃げようと思えば簡単に逃れられるのに、私を捉えてくる真っ直ぐな瞳に魅せられて、一歩も動けない。

「お前が意識してくれるの、なんか凄え嬉しい」

その上、無邪気な笑顔でそんな事を言われてしまっては、抵抗すら出来なくなってしまう。


「……加代、俺……」


暫くの間、お互い黙って見つめ合っていると、そのうち俊君の顔が徐々に視界いっぱい広がってきて。

まるで私の唇を食べるように、ゆっくりと俊君の唇が迫ってくる。