けど、海斗さんはまだ帰宅しておらず、私は肩を落とすと、そのまま自室に向かうため階段を上がる。


「……あ」

すると、丁度部屋から出てきた俊君と鉢合わせになり、反射的に目を逸らしてしまった。

自然に振る舞おうと心掛けているのに、不意打ちのように俊君が目の前に現れると、つい体が反応してしまう。

それが気に障ったのか。

俊君は表情を一気に曇らせると、突然私との距離を縮めてきた。

「おまえ、最近おかしくないか?なんか避けられてる気がするんだけど、俺何かしたか?」

しかも、自然を装うどころか、思いっきりバレてしまっている状況に、私は冷や汗が流れ始める。

「そ、そんなことないよ。別に普通だから……」

とりあえず、作り笑いで誤魔化そうと試みるも。
嘘を付くのは苦手なので、つい挙動不審になってしまう。

そんな私の言動に、俊君は眉間に皺を寄せると、更に一歩踏み込んできた。