「そういえば、眼鏡止めたんだな」

すると、突然話題を変えられたことに、私は戸惑いながらも首を縦に振る。

「最初に出会った頃とは全くの別人みたいだよ。なんか、輝いて見える」


そう笑顔で言われた綾さんの言葉が信じられなくて。

まさか、人からそんな事を言われる日がくるとは思いもよらなかった。

たがら、意味を飲み込むまでに少し時間がかかってしまったけど、後からじわりと嬉しさが込み上がってきて、自然と笑顔が零れ落ちる。

「これも、全部海斗さんのお陰なんです。海斗さんが、私を変えるきっかけを与えてくれたから、今の私があるんです」

そして、感謝の気持ちを込めながら、私は自信を持って答えた。

「それを聞くとあいつも喜ぶよ。それに、加代のこと実の妹みたいに大切にしてるから、尚更嬉しいだろうな」

そんな私を温かい目で眺め、しみじみと語る綾さんの姿に、心が大きく揺さぶられる。


そういえば、私はまだ海斗さんに何も言っていない。

こうして変えてくれたことが、支えとなってくれていることが、どれだけ心強くて、有り難いか。

まだしっかりと言葉で伝えてないような気がする。


そう思うと居ても立っても居られなくなり、気待ちが段々と騒めき立つ。


それから家に着くまでの道中、暫く世間話をした後。門の前で降ろしてくれた綾さんにお礼と別れを告げ、私は足早に家の中へと入っていった。