私はとりあえず軽く会釈をすると、綾さんの車に近づき、恐る恐る後部座席へと乗り込む。
車内は余計な物など一切なく、清潔感に溢れていたけど、ほのかに香る煙草の残り香が鼻をかすめ、少しだけ顔を顰めてしまった。
「お久しぶりです。まさか、綾さんだとは思いませんでした」
後部座席に座ると、私はバックミラー越しに運転する綾さんの顔をちらりと覗く。
「丁度この近くで海斗と会ってたんだ。あいつ暫く事務所来ないから」
そう言うと、綾さんはサイドブレーキを引き、車を発進させ、帰り方向へとハンドルを切り始める。
「あいつ、今年いっぱいでモデル業辞めるんだ」
そして、何気なく発っせられた一言に、私は一瞬自分の耳を疑った。
「……はい?モデルを辞める、ですか?」
何かの聞き間違えかと思い、彼女の言ったことを復唱すると、綾さんは呆気にとられている私を一瞥し、ふと口元を緩ませた。
「やっぱり、本人から何も聞いていないか。……まあ、まだ先の話だからな。あいつ来年フランスに行って、本格的にスタイリストの道に進むんだとさ」
それから、更に寝耳に水な情報が入り込み、私はあまりのショックに、口を開いたまま暫くその場で固まってしまう。
以前スタイリストになりたいことを熱く語ってくれた海斗さん。
モデルになったのも、夢のための布石だと言っていた。
だから、本格的にその道に進もうとすることは大変喜ばしいし、全力で応援したいけど……。
来年、海斗さんはフランスへと旅立ってしまう。
そう思うと一気に寂しさが込み上がり、全身の力が抜け落ちていく。
どっちにしても、私は来年実家に戻ることになる為、海斗さん達とはお別れになってしまう。
けど、遠い距離じゃないから、またいつでも会えると安易に考えていた。
だけど、フランスへ行ってしまえば、当分会うことなんて出来ない。
電話だって簡単には出来ないし、顔を見ることさえも出来なくなる。
そう思うと、寂しくて、怖くて、世界が真っ暗になるような感覚が襲ってくる。
まさか、自分がこんなにも海斗さんに依存していたなんて……。
改めて気付かされる彼の存在の大きさに、私はこれ以上言葉を発することが出来なくなり、しまいには目頭が熱くなっていく。
車内は余計な物など一切なく、清潔感に溢れていたけど、ほのかに香る煙草の残り香が鼻をかすめ、少しだけ顔を顰めてしまった。
「お久しぶりです。まさか、綾さんだとは思いませんでした」
後部座席に座ると、私はバックミラー越しに運転する綾さんの顔をちらりと覗く。
「丁度この近くで海斗と会ってたんだ。あいつ暫く事務所来ないから」
そう言うと、綾さんはサイドブレーキを引き、車を発進させ、帰り方向へとハンドルを切り始める。
「あいつ、今年いっぱいでモデル業辞めるんだ」
そして、何気なく発っせられた一言に、私は一瞬自分の耳を疑った。
「……はい?モデルを辞める、ですか?」
何かの聞き間違えかと思い、彼女の言ったことを復唱すると、綾さんは呆気にとられている私を一瞥し、ふと口元を緩ませた。
「やっぱり、本人から何も聞いていないか。……まあ、まだ先の話だからな。あいつ来年フランスに行って、本格的にスタイリストの道に進むんだとさ」
それから、更に寝耳に水な情報が入り込み、私はあまりのショックに、口を開いたまま暫くその場で固まってしまう。
以前スタイリストになりたいことを熱く語ってくれた海斗さん。
モデルになったのも、夢のための布石だと言っていた。
だから、本格的にその道に進もうとすることは大変喜ばしいし、全力で応援したいけど……。
来年、海斗さんはフランスへと旅立ってしまう。
そう思うと一気に寂しさが込み上がり、全身の力が抜け落ちていく。
どっちにしても、私は来年実家に戻ることになる為、海斗さん達とはお別れになってしまう。
けど、遠い距離じゃないから、またいつでも会えると安易に考えていた。
だけど、フランスへ行ってしまえば、当分会うことなんて出来ない。
電話だって簡単には出来ないし、顔を見ることさえも出来なくなる。
そう思うと、寂しくて、怖くて、世界が真っ暗になるような感覚が襲ってくる。
まさか、自分がこんなにも海斗さんに依存していたなんて……。
改めて気付かされる彼の存在の大きさに、私はこれ以上言葉を発することが出来なくなり、しまいには目頭が熱くなっていく。