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それから作業に集中し、ある程度キリが着いた頃には、それなりの時間となっており。
思いの外長居してしまったことに、私は慌てて帰り支度をして、図書室を出た。



「……はあ、疲れた」


帰路に着く間、襲ってきた疲労感に、つい独り言が漏れ出る。

衣装作りの時も大変だったけど、皆と作業していたので、それなりに楽しかった。

けど、課題作りはそんなチームプレーは関係なく。しかも、複雑なテーマなので、頭を使うしと。
兎に角、ただ苦痛でしかない時間に、憂鬱感が更に増していく。



「加代!」


すると、突然遠くの方で誰かに名前を呼ばれ、私は何事かと顔を上げる。

声の主を探すために辺りを見渡すと、路肩に駐車していた黒い車の窓から綾さんが顔を出し、こちらに手を振っているのを視界に捉えた。


まさか、こんな所で綾さんに遭遇するとは思いもよらず。

暫く呆然と立ち尽くしていると、そんな私には構わず、綾さんは人差し指で後部座席に乗るよう合図を送ってきた。