「……加代ちゃん、大丈夫?」


暫く沈黙状態が続いたあと、海斗さんは車を運転しながら私を一瞥し、気遣うように尋ねてきた。


「はい。いつも心配かけてごめんなさい。私はもう大丈夫です」


遠慮や、強がりではなく。

海斗さんといると不思議と気持ちが落ち着いてきて、私は小さく口元を緩ませてから首を縦に振った。


「海斗さん。今日、ゆう君の気持ちを聞こうとしたら、上手く聞けなくて拗れてしまいました。だから……」

それから、事の次第を説明すると、拳を強く握りしめて、ゆっくりと深呼吸をした。

「私決めました。ゆう君に告白するって。これ以上ゆう君の気持ちに近付けないなら、私からゆう君に近付かなきゃと思うんです。……じゃないと、何も進まないから」


恵梨香達と別れたあと、冷静になった頭で色々考えた末、行き着いた私なりの答え。


今の私に出来ることは、もうそれしかない。

相手の出方を待ち続けても、何も変わらないなら、こっちから動かなければ。


それを見い出せた瞬間、少しの勇気が顔を出してきて、私は瞼を閉じて胸に手をあてる。

「当たって、砕けろ。ですかね」

そして、自分に喝を入れるように、力強くそう言い放った。



「加代ちゃん、強くなったね」

そんな私を見て、優しく微笑みかける海斗さん。

その言葉が嬉しくて、更に後押しとなり、私もつられて微笑み返す。


いつからだろう。

こうして、笑える余裕が出来たのは。

気付かないうちに、後ろ向きな気持ちは消えていて、今はもう前だけを見ている自分がいる。


これまでの私じゃ、全く考えられなかったのに。


いつの間にか、こうも変わっていたんだ。



初めて実感が持てた瞬間、私は全てが吹っ切れた気がして。

窓の外から見える満点の星空も、純粋に綺麗だと思える程。

気付けば心の淀みは大分薄れていったのだった。