「さあ、着いたよ」
頭の中が悶々としている中、伯父さんの言葉でふと我にかえった私。
気付けば車は立派な門構えの前に停まっていた。
その奥には、民家ニ軒分はありそうな程の煉瓦で出来た西洋調の大きな家が建っている。
どうやら二人の学生さんを受け入れる前に大々的にリフォームをしたらしく、まるで新築のような佇まいに思わず感嘆の息が漏れる。
家の周りにはガーデニングが趣味の伯母さんが育てている色彩豊かな季節の花が外観を飾り、その美しさにうっとりしながらも、まだ心の準備が何も出来てない私は、今更ながら心臓が激しく鳴り響く。
この門を潜り抜ければ、いよいよ知らない男の人達との同居生活が始まってしまう。
やっぱり初対面だから第一印象を良くしなきゃダメだよね。
でも男の人に免疫がないから、上手く話せる自信が全然ない。
とりあえずここは、はじめましてと自己紹介をして笑顔を見せればいいのかな。
……ああ。
でも笑い方がぎごちなくなりそうで不自然になるかも。
だけど、無愛想だと余計印象悪いような……
「あんたがおばさんの姪っ子か」
「うひゃあっ!」
頭の中で色々とシュミレーションをたてながら車を降りると、突然背後から知らない男の子の顔が伸びてきて、思わず変な叫び声をあげてしまった。
その反動で眼鏡が思いっきりずれ落ち、暫しの間、石像のように硬直してしまう。