「加代ちゃん、お待たせ」
すると、裏門前に到着した海斗さんがタイミング良く現れ、気まずい空気が少しだけ和らいだ。
しかも、夜とあってか、変装はせずに堂々と素顔を晒している状態に、私は内心かなり焦った。
「海斗さん!またお会い出来て嬉しいですっ!」
一方で、これまで顰めっ面をしていた恵梨香の表情は一気に明るくなり、彼の元へ勢いよく駆け寄る。
海斗さんは恵梨香の猛烈な歓迎をものともせず、静かな笑みを浮かべながら受け止めると、ふと私の隣に立っているゆう君に視線を向けた。
「あれ?君ってもしかして加代ちゃんの幼馴染?」
「あんた誰?」
突然声を掛けられたゆう君は、警戒した様子で眉をひそめると、怪訝な眼差しを海斗さんに向ける。
「僕は加代ちゃんと同居している櫻井海斗です。君のことは彼女から聞いてて。いつも加代ちゃんがお世話になってます」
しかし、海斗さんは平然とした態度でいつものやんわりとした笑顔を浮かべると、ゆう君に手を差し出してきた。
「……どうも。岡田佑樹です」
戸惑いながらも、律儀に挨拶を交わし、海斗さんの手を握るゆう君。
少し緊張しているのか、心なしかゆう君の表情が固い気がする。