「……で、紺野とは一体何があったの?」

裏門に到着するやいなや。
早速真顔で本題に触れられてしまい、私はびくりと肩が小さく震えた。

「あ……。えっと……」

先程ゆう君と言い争い、メンタルが崩れ気味なところで彼女の話をするのは、なかなかにつらい。

けど、恵梨香にはきちん事情を説明したいので、私はどこから話そうか頭の中を整理していた時だった。


遠くから騒々しい声が聞こえ始め、段々と私達の方に近付いてくる。

声のする方を振り向くと、その先には体育館から出て来たバスケ部員達。

その姿を捉えた瞬間、私は反射的に恵梨香の後ろへと隠れてしまう。


「加代?どうしたの急に?」

いきなり盾にされ、私の謎の行動に恵梨香は困惑しているけど、私は構うことなく身を縮こませた。


とにかく、今はゆう君には絶対に会いたくない。


あんなことがあって、一体どんな顔して会えばいいのか分からない。


「お願い、恵梨香。何も聞かないで私を隠して!」

必死になる私に益々恵梨香は訳がわからないといった様子だったけど、とりあえず言われた通り、塀を利用して上手いこと私を隠してくれた。


「おい、マジか。今電車動いてないんだってよ」

裏門前に集まって来たバスケ部員は、やはりその話題で持ちきりになっていて。

私達と同じように、電車通学の者は家に電話を掛けていたりと、暫くこの場に留まる。


本当に、今日は何でこんなにも偶然が重なるのだろう。

普段は滅多にないくせに、求めていない時に限ってタイミングが合ってしまうなんて。



「それじゃ、俺帰るわ」

心の中でこれでもかと愚痴をこぼしている最中。
直ぐ近くで聞き覚えのある声が響き、私は肩を思いっきり震わせた。

何とかその人物に見つからないことを願って、体を最小限に丸める。


「岡田は近くていいよな。じゃあ、また明日な」

それから、バスケ部員に別れを告げているところをこっそり覗き見し、息を殺して彼が立ち去るまでその場でじっと耐える。