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「加代、お待たせ!」


昇降口の前で待っていると、部活上がりの恵梨香が、駆け足でこちらに向かってきた。

「課題はどう?進んだ?てか、聞いてよっ!あたし今日コーチにさあ……」

落ち合うやいなや。不満げな顔でいきなりマシンガントークを始める恵梨香。

そんないつもと変わらない彼女を見ていると、荒れていた気持ちが少しだけ和らいでくる気がする。


こうして、恵梨香の止めどない愚痴を聞きながら、校門前まで辿り着いた矢先のこと。

入り口前で沢山の人集りが出来ていて、私達はそこで足を止めた。

何やら、皆んな困惑した様子でざわめき立っている。

「何かあったのかな?」

恵梨香は首を傾げ、たまたま近くにいた知り合いの女子達に事情を尋ねると、どうやら信号トラブルで長いこと電車が止まっているとのこと。 

「どうする加代。私達も迎えに来てもらおっか?」

恵梨香は困惑した表情で、こちらに視線を戻すと、鞄からスマホを取り出した。


人身事故なら動く時間も大体予想つくけど、一時間以上も電車が動かないトラブルだと全く予想出来ないし、下手すれば終日止まっている可能性もある。


伯母さんの家から学校まで車で行くと約二十分。

これは、迎えに来てもらった方が早いかもしれない。


「そうだね。私、伯母さんに電話してみる」

そう結論に至ると、私達はそれぞれ家に電話をかけ、幸いにもお互い直ぐに迎えに行けるという返答をもらい、一先ず胸を撫で下ろす。

しかも、私の場合は、家に丁度いた海斗さんが迎えに来てくれるようで、それを聞いた恵梨香のテンションは爆上がりした。

とりあえず、正門は人が多いので、私達は比較的静かそうな裏門へと移動することにしたのだった。