その時、突然ゆう君は私の両腕を勢いよく掴み上げ、そのまま私の背中を本棚に打ちつけてきた。

手加減はしてくれたようで、痛みはほとんど無いけど、手に持っていた本は床に散らばり、彼らしからぬ粗暴な振る舞いに、空いた口が塞がらない。

「お前に、俺の何が分かるんだよ」

そして、顔を酷く歪ませながら、私を睨みつけてくるゆう君。

こんな怒りを露わにする姿を見るのは初めてで、肝を抜かされた私は、何も言えずその場で固まってしまった。


その直後。
突如けたましく着信音が鳴り出し、ゆう君は私から咄嗟に手を離す。


「……はい。……すみません、今から行くんで」

それから直ぐにポケットからスマホを取り出すと、私に背を向けて誰かと通話をし始めた。

「部長に呼ばれたから、もう行くわ。それじゃあな」

程なくして、スマホをポケットにしまうと、ゆう君は素っ気ない態度でそう言い残し、さっさと図書室を出ていってしまった。