「そういえば、あれから紺野さんは大丈夫だった?」

兎にも角にも、これ以上変な期待をしないよう、私は頭を切り替えて話題を逸らす。

本当はあまり触れたくなかったけど、全く聞かないのも不自然な気がするので、なるべく平静を心掛けて尋ねてみた。

「ああ。あの後先生呼んで、俺もさっさと帰ったから」

すると、ゆう君は何故か表情を曇らせ、声のトーンを落としてそう答えた。

急変した彼の態度に疑問を感じていると、ふとある事が脳裏に浮かぶ。

そういえば、紺野さんが起きる直前、ゆう君は何かを言おうとした。  

けど、彼女にそれを遮られてしまい、結局分からずじまい。

紺野さんが拒絶した、彼が言わんとする言葉は一体なんなのか。

辺りを見渡す限りだと、この場には私とゆう君しかいない。

一度覚悟を決めて問いただしたことだし、せっかくなら、ちゃんと最後までゆう君の気持ちを知りたい。

私だってそれを聞くのは怖いけど、海斗さんがあの時教えてくれた。

本人の口からちゃんと聞くまでは、諦めるなと。

だから、私は震える胸を押さえて、拳を握り締めて、再び意を決する。