なんということだろう。

なるべく彼を避けていたのに、まさかここで出会してしまうとは。

しかも、文化祭以降初めて顔を合わすので、非常に気まずい。

それに、まだ気持ちの整理だって出来ていないのに。


「そんなに資料集めて、何か調べ物でもすんのか?」

一方、ゆう君は今までと何も変わらない態度で接してくるので、私も変に意識しないよう、なるべく自然体を装うことにした。

「うん。私、研修交流会に選ばれたの。だから、暫くは課題作りしなきゃなんだ」

「ああ、あれか。俺も二年連続選ばれたけど部活あるから断ってる。ていうか、あんなの面倒くさ過ぎるだろ」

毎年選ばれるなんて、流石は文武両道。

きっと、ゆう君ほどの優秀な人なら、この研修会を蹴った所で痛くも痒くもないんだろうなと。

羨望の眼差しを向けると共に、改めてこの行事の不人気さを知り、さっさと廃止になってくれないかと密かに願う。  

「けど、加代が行くなら考え直せば良かったな」

「え?」

すると、何気なく言われた一言に私は過剰反応してしまい、思わず動かしていた手を止める。

「お前がいれば、なんか楽しそうだろ?」

そして、無邪気な笑顔を向けてくる彼の反応に、期待値が段々と高まっていった。

おそらく、その言葉に深い意味はないのだろうけど、それだけでも気持ちは舞い上がってしまい、自制しようにもなかなか歯止めがきかない。