「そうですよね。これじゃあ紺野さんの言う通り、ただの欲深い人間で、彼を好きでい続ける資格なんて私にはないですよね」

そして、キリキリと痛む胸を抑えながら、私は自嘲気味に笑って見せた。

「……ねえ。加代ちゃんってよく鈍いって言われない?」

しかし、返ってきた答えはこれまた予想外で。 

一体どういう意味なのか理解出来ずに、きょとんとした表情で突っ立っていると、海斗さんは小さく首を横に振った。

「ごめん、なんでもない。とりあえず話戻すけど、あまり重く考えないで。君がそう意識するのは無理もない話だから」

「それってどういう意味ですか?」

「そのうち分かるよ」

どうやら、これ以上話す気はないのか。

海斗さんは少しだけ困った表情で笑うと、半ば強引に会話を終了させて前を歩き始めてしまった。

仕方ない?そのうち分かるとは?

否定はされなかったけど、結局この気持ちは一体どうすればいいのだろう?

打ち明けたはいいものの、蟠りは解消することなく新たな疑問だけが残ってしまい、暫しの間呆然と立ち尽くす。

しかし、いくら考えても答えなんて出せるはずもなく。私は諦めて思考を強制終了させると、悶々とした気持ちのままお寺を後にしたのだった。