__一時間前。



「失礼のないように向こうでもちゃんとお手伝いするのよ。これお母さんの国際電話番号だから何かあったら電話してね。体には気をつけるのよ!それじゃあ、また来年会いましょう。……っあ、同居人の子達にも宜しく言っといてねー!」


……なんて。まくし立てるようにお別れの挨拶を交わし、清々しい程の爽やかな笑顔を振りまいて、母親はアメリカへと旅立ってしまった。

私は最寄り駅までしか見送ることが出来ず、呆気にとられながら改札口へと向かう母親の背中を消えるまで眺め続けた。


自分の母親ながら、なんとも身勝手なんだろう。

こんな大事な話を忘れていた挙げ句、別れを惜しむことなく普段の出勤と変わらない様子でさっさと出発してしまうなんて。

ぽつんと取り残された私は、いつも振り回されてばかり。

そういう良い加減な性格は昔から変わらないので慣れているけど、流石に今回のは堪える。