「あー腹減って死にそう。おばさん飯まだ?」

そして、着々と夕飯の準備が進む中、部活から帰って直ぐにシャワーを浴び終えた俊君が、タオルで髪を拭きながら居間に入ってきた。

「あともうちょっとだから、待っててね」

今日はそれなりに品数も多く、思いの外時間がかかってしまったことに、私と伯母さんは忙しなく出来上がった料理を器に盛り付けていく。


流石に男三人もいると、量が尋常じゃない。

特に日々部活に打ち込んでいる俊君は、三人の中でも一番よく食べるので、これだけ作ってもあっという間に平らげてしまう。

とりあえず、リビングのソファーで待ちぼうけをくらっている俊君の為に、私は揚げたてのからあげを小皿に乗せて彼の元へと駆け寄った。

「はい、俊君。これで少し我慢してね」  

「おっ、サンキュ。気が利くじゃん」

おそらくあと数分はかかりそうなので、痺れを切らされる前につまみ用の唐揚げを差し出すと、俊君は笑顔で手を伸ばす。

それから、一瞬にしてお皿の上にあった唐揚げがなくなり、改めて男子高校生の食欲旺盛っぷりに言葉を失う。

すると、何やら突然真顔になり、こちらをじっと見据えてくる俊君。

「どうしたの?」

何故急に見つめられているのか理解出来ずに狼狽えていると、俊君は何事もなかったように私から視線を外し、今度はテレビの方へと目を向けた。

「おまえ、最近元気ないよな」

そして、何気なく呟いた彼の一言に、心臓がどきりと震える。


まさか、私の心境がバレてる!?

ここでは誰にも気付かれないよう精一杯明るく振舞っていたつもりなのに。

あっさりと図星をつかれてしまうなんて、もしかして全く隠せてないとか?

そんな動揺する私を見て益々表情が険しくなってきた俊君は、不意に腕を掴んできて、勢い良く自分の方へと引き寄せて来た。 

その弾みでバランスを崩した私は、小さな悲鳴を上げ、そのまま彼の膝の上に倒れ込む。

一体何事かと上半身を起こすと、目前には俊君の顔が広がっていて。

しかも、髪が濡れているせいか、普段よりも色気があり、反射的に体の熱が徐々に上昇し始めていく。