「あっ」

すると、前方に目を向けた途端ある人物が視界に映り、私は思わずその場で立ち止まると、咄嗟に空き教室へと身を隠す。

そして、暫く身を潜めてから、声が段々と遠ざかっていく頃を見計らい、恐る恐る教室から顔を出した。

視線の先には、友人達と楽しそうにお喋りをしているゆう君の姿。

その後ろ姿をひたすら眺めながら、私は再び深い溜息を漏らす。

あれから、ゆう君と顔を合わせづらくなり、こうして見かけると避けるようになってしまった。

まだ本人の口からはっきり言われたわけではないけど、半ばフラれたも同然な気がして。

顔を見ればあの時の絶望感を思い出してしまい、つい防衛本能が働いてしまう。

これまで、自分を変えようと必死になってここまで来たというのに。

結局振り出しに戻ってしまった現状に、我ながらなんとも情けない。