「ねえ、君一人?」

その時、不意に声を掛けられ、反射的に肩が跳ね上がった私は恐る恐る背後を振り向くと、そこには他校の制服を着た男子二人が、にやついた表情でこちらを眺めていた。

「メイド服めっちゃ似合うね。超タイプなんだけど、良かったら俺らと回らない?」

一人は赤茶色の短髪にピアスを開けた男で、もう一人は金髪で襟足まで伸びた長い髪の男。

制服を見る限りだと、この辺りでも悪評が定着している不良校の生徒で、思わず表情が強張ってしまう。

「……あ、あの。ごめんなさい。人を待ってるんで……」

一先ずこの場を切り抜ける為、毅然とした態度で断ろうと試みるも。

そんな度胸なんて持ち合わせているはずもなく、意思に反して声が震え出す。

「そんな怯えた目で見ないでよ。俺達はただ君と仲良くしたいだけだからさあ」

それが相手を助長させてしまったのか、金髪の男は隣に座り、更に距離を縮めてきた。

その馴れ馴れしさとしつこさに嫌悪感がさし、一刻も早くこの場を離れる為、椅子から立ち上がろうとした時だ。

突然誰かが男の腕を掴み上げ、驚いた目で視線を向けると、そこには物凄い剣幕で睨みをきかせている俊君の姿があった。