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「2年8組、メイド喫茶やってま~す!」

「他にもメイドさんとミニゲームや、記念撮影も実施してま~す!」

「……ぜ、是非お越し下さい~」

教室の前で、私は自分の中でありったけの声を出して呼び込みをする。

しかし、隣にいる女子二人の声量には到底敵わず、加えて周りの雑音で見事掻き消されてしまい、おそらく誰の耳にも届いていないかもしれない。


「もう、山田さんもっと声出してよ!全然聞こえないじゃん!」

そんな私を見兼ねた女子二人は、頬を膨らませながら一喝する。

「ご、ごめんなさい……」

これでも、精一杯なんです。

と、心の中で付け加えながら私は素直に頭を下げた。


一般公開が始まって早々、既に廊下は来場者でごった返しになり、かなり大盛況の有様。

ただでさえ人前に出ることなんてしないのに、この大人数の中呼び込みなんて、そんな度胸は持ち合わせているわけもなく。

まだ始まってから、小一時間しか経ってないのに、既に私の士気がどんどん下がり始めてくる。


「それよりも、メイド服着替えてないの山田さんだけだよ。せっかく可愛く作ってくれたのに、もったいないじゃん」

すると、今度は未だ制服のままであることを指摘されてしまい、私はどう返答すればいいか言葉に迷う。

「そうだよ、山田さん頑張ってたのに。それに、文化祭こそ出会いの場なんだよ!私は何としてでもここで彼氏見つけるつもりだから!」

そして追い討ちのごとく、隣で物凄い熱気を帯びながら熱弁するクラスメートの圧に押され、思わず一歩引いてしまった。