「加代、全国大会ってマジで凄いんだぞ」

突然声色が変わり、こちらの方へと振り向いてきた俊君の表情には、いつもの明るさが戻っていた。

「この前の練習試合の比じゃねーし、俺以上の猛者なんてごまんといるんだ」

そして、輝きを帯びた力強い目で私を見据えると、緩ませた口元からは白い八重歯がのぞく。

「けど、それでも俺は優勝する。その瞬間を加代に見せてやるから」

それから迷いを一切感じさせない、自信に満ちた真っ直ぐな彼の意志が純粋に格好良いと思えて、自然と頬が熱くなる。

「……約束だよ?」

「ああ、絶対だ」

そんな心境を悟られないよう、私は視線を逸らして確かめるように呟くと、俊君は満面の笑みで大きく頷いた。


もし、ゆう君と再会していなかったら、私は俊君を好きになっていたかもしれない。

そんな邪な考えがよぎってしまう程、やっぱり俊君も海斗さんに負けないくらい魅力的で。

未だ高鳴る鼓動が彼に伝わってしまわないかと、少し心配になってくる。


「それにしても、あれだな」

こうして暫くお互い黙ったままでいると、不意にポツリと呟いた俊君に視線を戻す。

しかし、待てど暮らせど一向に口を開こうとせず、私は怪訝に思いながら首を傾げる。


「お前、眼鏡ない方が断然可愛いな」


……。


…………。


……はいっ!?



ようやく口を開いたかと思えば、とんだ爆弾発言に私は目が点になる。


「耳真っ赤だぞ?」

自分だって先程まで躊躇していたくせに、いつの間にか余裕の笑みを浮かべていることが何だか悔しくて。

私は全身に熱を帯びていくのを感じながら、俊君を軽く睨み付ける。

それからは、なんて答えればいいのか分からなくて、家に辿り着くまでの間、まともに俊君の顔を見ることが出来なかったのだった。