「……でも、本当に助かった。あの時お前が止めてくれなかったら、あいつらが言うように俺はまた二年前と同じことをしてたんだ」
それから暫しの間沈黙が流れた後、俊君は急に声のトーンを落とし、ぽつりぽつりと過去を曝け出していく。
「始めは正当防衛だったけど、そのうち止められなくなって、気付けば謹慎処分をくらって、試合にも出れなくなって……めちゃくちゃ後悔したんだ」
そこまで話すと、今度は深い溜息を吐き、こちらに視線を向けて自嘲気味に笑った。
「可笑しいだろ。プロになると決めて、苦労して入学したその年にそんな事件起こすなんて。本当バカだよな、俺」
そして、憂いを帯びた目で満天の夜空を見上げた。
「加代が言ったように、無駄にするところだった。これまで培ってきたものを、また全部壊すところだったんだ……」
そう言うと、俊君は歯を食いしばり、再び押し黙ってしまった。
「……俊君」
暫く無言のままでいる彼が段々と心配になり、私は顔色を伺おうと横顔を覗き込んだ瞬間だった。