「だめぇーーっ!」

しかし、すんでのところで私は身を乗り出し、俊君の背中に思いっきり抱きついた。

その瞬間、負傷した足に激痛が走るけど、今はそんなことに構ってなんかいられない。

兎に角、これ以上の暴力は止めて欲しくて。

私はしがみ付くように、彼の背中を強く抱き締める。


「ダメだよ俊君!こんな所で全部無駄にしちゃダメ!プロのサッカー選手になるんでしょ!?」

そして、彼らが言うように、盲目になっていることに早く気付いて欲しくて、私は必死になって叫ぶ。

「約束したよね?私を全国大会に連れてってくれるって。俊君の勇姿をまた見せてくれるって言ったよね!?」

とても真っ直ぐに自分の夢へと突き進んできた俊君。その強さを私に見せてくれて、前に進む力を与えてくれて。

常に、私よりもずっと前を歩いている彼の背中を、いつまでも見続けていたいから。

どうか、こんな所で全てを壊さないで欲しい。

どうか、自分で自分を壊さないで欲しい。


そう願いを込めて、私は俊君を抱き締める腕に力を込める。



「君たち、何してるんだ!?」

その時、道路脇にパトカーが止まると、中から警官二人が慌てて飛び出し、私達の元へと駆け寄ってきた。


「やべ!逃げるぞっ!」

すると、分が悪くなったヤクザまがいの男性達は、警官の姿をとらえた瞬間、一目散に逃げ出していく。

こうして、この場はなんとか収まり、私達は警官から事情聴取を受けると、程なくして特に大事に至らずその場から解放されたのだった。