「いって!なんだよ!?」

不意に脇から聞こえた、怒りが混じった男性の低い声。
途端に私達はピタリと動きが止まり、声のした方を振り返る。

視線の先には、スキンヘッド姿でサングラスを掛けた、二十代半ば位の男性。

白シャツ姿で首には金のネックレスをぶら下げて、いかにも“その道”の人みたいだ。

しかも、仄かにお酒の匂いが漂ってきて、私はつい顔をしかめてしまった。

「す、すみません。気をつけます」

流石に大人しくなった俊君達は、穏便に済ます為すぐさま頭を下げる。

「は?謝って済むと思ってんのか?丁度いいや、今金ねえから、てめえら慰謝料として有り金全部よこせよ」

すると、ここで見逃してくれるのかと思いきや。まさかの金銭要求に私達は固まった。

これが俗に言う、カツアゲというものなのか。

ドラマや漫画でしか見たことがない光景が今目の前で起こり、私は唖然としながらその場で立ち尽くしてしまう。

「おい。何こんなとこで餓鬼共に金巻き上げようとしてんだよ」

その時、更に後からもう一人現れた長身の男性。

柄物のシャツを着て、刈り上げたヘアスタイルにタバコを加えているその姿は、おそらくスキンヘッドの男性と同じ部類なのだろう。

そして、カツアゲを止めに来てくれたのかと少し期待したけど、それを裏切るように、長身の男性は私達を挟み込む型で背後へと回ってきた。

「まあ、これだけいればそれなりの額になるか」

それから、あろうことか。

私達全員からお金を巻き上げようとする勢いに、段々と恐怖で体が震えてくる。

どうしよう。誰か早く警察を……。


時間帯が遅いため、ロータリーにはあまり人気がないけど、目立つ場所だからきっと誰かが通報してくれるはず。

そう信じて、周囲を取り巻く不快な煙草の匂いに耐えながら、早く助けが来ないかと切に願っていた時だった。