その時、突然視界が暗くなった瞬間。海斗さんの甘い香りと温もりが全身を包み込み、咄嗟の出来事に頭の中が真っ白になる。

「そうだね、それは分かってる。でも、唯香を裏切った事実は消せないし、一生悔やみ続けると思う」

不意に抱き締められ、頭がパニック状態の私とは裏腹に。海斗さんはとても落ち着いた口調で、ゆっくりと耳元で語りかける。

「けど、加代ちゃんにそう言われると本当に唯香に叱られてるみたいで、思い知らされた……かな」

そして、まるですがりつくように私の体を更に強く抱き締め、首元に顔を埋めてきた。


「ごめん。暫くこのままでいさせてくれないかな?」

それから暫く黙り込んでしまった後。

消えそうな声で弱々しく訴える海斗さんの全てを受け入れようと。

私も彼の背中に手を回し、包み込むように抱き締め返したのだった。