「そのあと病院から唯香が息を引き取ったと連絡があったんだ。あの時が山場だったみたいで、唯香は一人苦しみながら死んだんだ」

そう悔やむように、一点を見つ出す瞳は揺れていて。

これまでの海斗さんからは想像がつかない程弱々しく、少しでも触れると壊れてしまいそうな姿に、段々と目頭が熱くなってくる。

「何よりも大切な妹だったのに。どんな時でも必ず守るって誓ったはずなのに。唯香の最期のSOSを僕は拒むなんて……本当に最低な兄だよ」

それから苦笑いを浮かべるその表情がとても切なく、苦しくて。

気付けば勝手に腕が伸び、海斗さんに思いっきり抱き付いてしまった。

「加代ちゃん!?」

そんな私の大胆な行動に目を丸くする海斗さん。

私自身もここまでする自分に驚いているけど、それよりも、これ以上彼の苦しむ表情を見たくなくて。

構わず更に力を込めて海斗さんの体を抱き締める。

「お願いです、そんなに自分を責めないで下さい。私なら、自分の大切な人が、自分のせいで苦しむなんて絶対に嫌です」

そう胸の内を叫ぶと、私は悲痛な面持ちで海斗さんを見上げた。

「自分の存在がその人を縛るなんて、そんなの耐えられません。唯香さんだって同じはずです。例えどんな事をされても、大切な人には幸せになって欲しい。そう願うのは、当然じゃないですか」

肉親なら尚更で。例えば自分の身近な人達に置き換えてみても、それは変わらない。

恵梨香も、海斗さんも、俊君も、ゆう君も。

私にとって掛け替えのない人達で、きっと何があっても、ちょっとやそっとじゃこの想いが揺らぐことはない。