「唯香はね、昔から体が丈夫な方ではなかったんだ。両親は共働きであまり家に居なかったし、僕が唯香の親代わりって感じだったかな」

すると、写真に視点を置いたまま、ぽつりとぽつりと過去を語り出す海斗さん。

「歳は加代ちゃんと同い年で、引っ込み思案だったから、幼い頃から常に僕の後ろを不安げにくっついてて、本当に可愛かったな」

それから、愛しさを込めて思い出すように笑う表情は、まさに“お兄ちゃん”そのものだった。

そんな横顔を微笑ましく眺めていると、突然笑顔がふっと消え、海斗さんは視線を足下へと落とす。

「あれは僕が大学に進学したばかりの頃だったかな。突然唯香が倒れたんだ。白血病だって。しかも状態はかなり悪化してて、医者から余命宣告を受けた時は本当に信じられなかったよ」

そう重々しく話すと、海斗さんは私に視線を戻し、とても寂しそうな目をしながら口元を緩ます。

その表情から心境がひしひしと伝わり、段々と胸が締め付けられていく感覚に、私は自然と顔を強張らせてしまった。

「両親は多忙な人だから、唯香の入院の世話は基本僕がしていたけど、大学とモデルの両立もあって、あの頃は本当に大変だった」

そこまで話し終えると、海斗さんは深い溜息を一つ吐き、そこから思い詰めるように暫く口を閉ざしてしまっ