「海斗さんおかえりなさい。ちょっと数学の課題に手間取っちゃって」

「そうなんだ。僕でよければ教えようか?こう見えて理数系なんだよね」


……え?


海斗さんの質問に何気なく答えたら、まさかの予想だにしない返答に、動きが固まった。

「だ、大丈夫です!だって、海斗さん今帰ったきたばっかりだし、こんな時間に課題に付き合わせるなんて、とんでもないです!」

そもそも、ここへ来たのはそれが目的ではないので、私は力一杯首を横に振る。

「なに遠慮してんの。明日の講義は午後からだし、僕は全然平気だがら」

しかし、そんな断りをいつもの眩しい笑顔でさらりと交わされてしまい、心が大きく揺らぎ始めていく。

ここで海斗さんの好意を突っぱねたら、この先路頭に迷う未来しか見えない。

起きていられるのも限界があるし、未完成のまま課題を提出するのはなるべく避けたいし……背に腹はかえられないかも。

そう結論に至った私は、ここはお言葉に甘えようとゆっくり頷いた。