「の、登れた~」

岡田君の手を借りて、ようやく麓まで辿り着いた私は、大きく息を吐いた。

手を握っていた緊張感と、足場が不安定な恐怖心と、スカートが捲り上がる羞恥心と戦っていた為、疲労感を覚えながらジャングルジムの隙間に腰掛ける。


気付けば、いつの間にか空が茜色に染まっていた。

公園は高台にある為、ここからだと街全体がよく見える。


「懐かしいな、ここから見る景色。あの頃のままだ」

黄昏る岡田君の横顔を夕日が照らし、時折吹く風が彼のサラサラの髪を撫でる。

そんな姿をこっそり覗き見しては見惚れる私。

「そういえば、例の同居人とは上手くいってんのか?」

すると、不意に振り向いてきて、慌てて視線を前に戻した。

「うん。最近本当の家族みたいに思えるの。私一人っ子だから、兄妹に憧れてて。だから、今はすごく楽しい」


引っ越してから、早くも一ヶ月が経過。

この短期間でも、人は家族のような絆が築けるこを学んだ。

それもこれも、二人の性格によるものかもしれないけど、つくづくあの二人が同居人で良かったと今は心からそう思う。

その気持ちが全面に現れ、満面の笑みを岡田君に向けた。