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「岡田君、お待たせ!」

小走りで向かうと、公園のベンチに座っていたジャージ姿の岡田君は、私に気付くや否や隣に座るよう合図してきた。

その仕草がまるで恋人同士みたいで、更に緊張感が増してきた私は彼の元に近付き、恐る恐る隣に座った。

「悪いな、急に呼び出して。今さっきそこの体育館で他校生の奴とバスケしてて」

言われてみれば、ベンチ脇にはボールが入っているナップザックが転がっていて、髪も若干濡れている。   

「実は引っ越してから、たまにここに来るんだ。その度に加代に会いに行こうって何度か思ったけど……忘れられてたら嫌だし、なかなか踏み込めなかった」

すると、不意に寂しそうな視線を向けられてしまい、彼の言葉がぐさりと胸に突き刺さった私は、自責の念にかられる。

「その節は本当にごめんなさい」

とりあえず、ここは謝るしかないと。
深々と頭を下げると、岡田君は無言で首を横に振った。

「いや。俺も怖くて話しかけなかったから、お互い様だな」

そして、苦笑いで胸の内を明かしてくれたことに、私は目を丸くする。