なんだか、とても不思議。
以前の私は着ようとも思わなかったのに。
「……私、変われたのかな」
何やら感慨深い気持ちになり、胸の奥からじんわりと熱いものが込上がってきて、誰もいない部屋の中で思わず独り言が漏れ出る。
とりあえず、早く着替えなきゃ。
岡田君が待ってるんだから。
私は、鏡の前に立ち大きく頷くと、ワンピースのファスナーを開けて袖を通す。
それから、縛っていた髪を下ろし、もう一度鏡の前に立った。
髪型と眉毛を整えてくれたお陰か、撮影現場で初めてワンピースを着た時と比べ、嫌悪感があまりない。
この色も恵梨香が選んでくれただけあって、自分に合っている気がする。
ただ、やはりこの大きな黒縁眼鏡だけは何度見ても不釣り合いで。
今更ながら、何故こんな存在感を主張するダサい眼鏡を選んでしまったのか後悔が押し寄せてくる。
眼鏡を外してもいいけど、それだと岡田君の顔がよく見えないし、ここはもう諦めるしかないと。
深い溜息を吐いたあと、私は身支度を整えるため洗面台へと向かう。
髪をとかして、女の子らしくハーフアップに縛り直して、メイクは出来ないから、せめてお気に入りのリップを付けて準備は完璧。
「よし!行くぞ」
そして、鏡の前で笑顔を浮かべながらガッツポーズをする。
あの時、海斗さんは笑った方が良いと言ってくれたから、その言葉を糧にして自分を奮い立たせる。
それから、高鳴る鼓動を抑え、私は岡田君が待つ公園へと急いで向かった。