海斗さんが、私に妹さんの影を重ねていたこと。
その話を聞いて、これまで感じていたもやもやが一気に晴れたような気がする。
時々感じる慈愛に満ちた眼差し。
たまに触れてくる、海斗さんの優しい手。
それも全部私を通じて亡くなった妹さんを見ていたことを知り、私は目頭がじわりと熱くなってきた。
本当に、海斗さんは何処まで優しい人なんだろう。
そこまで想われている妹さんは、きっと幸せだったと思う。
油断すると涙腺が崩壊してしまいそうで。
周りに迷惑をかけたくないから、歯を食いしばって涙を必死に堪える。
「……あの、初対面でこんなこと聞くのは失礼なのは分かってるんですけど、海斗さんとはなんで別れちゃったんですか?」
すると、これまでずっと口を閉ざしていた恵梨香から突如投げられた、ぶっこんだ質問に、私はぎょっとした目で彼女を見る。
それは私も疑問に感じていたことだけど、聞く勇気が持てなかったので気にしないようにしていたのに。
それをここで聞いてしまう恵梨香の精神力は流石だなと。
改めて彼女の強さに感心する反面。
楓さんの反応が心配になり、私は恐る恐る彼女の方に視線を戻した。
「そうね。別れたきっかけは、あたしの我儘かな?」
けど、楓さんは全く気にする素振りもなく、笑顔でそう答えてくれたことに、私と恵梨香は目が点になる。