「ねえ加代、なんの話？」

そんな私達の会話について行けず、一人置いてけぼり状態の恵梨香は、少し不貞腐れるような目を向けて私の服の裾を引っ張る。

とりあえず、彼女にもこれまで起きた事を全て打ち明けると、海斗さんの大胆な行動に、恵梨香は暫くの間口を開けたまま固まってしまった。

「あたしはね、海斗がそこまでするのも無理ないと思うの。今日あなたを見て、益々納得しちゃった」

すると、突如ポツリと呟いた楓さんの一言に、私は意味が分からず首を横に傾げる。

「海斗には妹がいたの。歳は丁度あなた達と同じくらいだったかな？でも彼女は二年前に亡くなったの。白血病だって」

そして、初めて聞かされた海斗さんの過去に、今度は私まで空いた口が塞がらなくなってしまった。


そう言えば、海斗さんと俊君の家族の話はまだ一回も聞いたことがない気がする。

最近ではここでの暮らしが居心地良過ぎて、まるで本当の家族みたいだと感じるようになり、海斗さんと俊君のそれぞれの家の事は、あまり気にしたことがなかった。

二人ともいつも笑顔で、毎日輝いていて。

そんな暗い過去を持っているような素振りなんて、これまで全く見せたことがないのに……。