「それじゃあ、季節のフルーツタルトと、チョコプディングのバニラアイス添え、ブルーベリーチーズケーキ下さい。あと、ブレンドハーブティー3つで」
楓さんに連れられて、閑散としたお洒落なアンティーク調のカフェに入った私達は、促されるままにメニューを選んだ。
「あ、安心して。ここは全部あたしの奢りだから」
一通り注文を終えた楓さんは、未だ表情の固い私達を見て、花が綻ぶような笑顔を向けてくる。
その仕草が同性の私でもときめいてしまう程美しく、やはりモデルというだけあり、一般人とは逸脱したオーラを放っていた。
これで海斗さんが隣に並ぶと、二人のオーラに押し潰されて溶けてしまうのではないかと。
そんなことを頭の片隅で思い浮かべながらも、一先ず、これまでずっと心に引っ掛かっていたある話をここで触れてみようと意を決する。
「あの……楓さん。あの時のことは、その……」
そう決めたはいいものの、なんて言えばいいのやら。
海斗さんの善意をごめんなさいと謝るのは何だか可笑しな気がする。
けど、楓さんに迷惑をかけてしまったのは事実だから、やはりここは頭を下げるべきなのか……。
「あなたが気にする事じゃないから大丈夫。それに、綾さんのおかげでお咎めもなかったから、安心して」
言葉に迷っていると、そんな私の気持ちを汲んでくれたようで。
楓さんはやんわりと口元を緩ませながら答えてくれたことに、私は小さく胸を撫で下ろした。