「あれ、あなた達は……」

すると、後方から聞き覚えのある声が響き、私と恵梨香は同時にその場で動きが止まる。

「確か海斗の同居人の子だよね。加代ちゃんだっけ？あと、そのお友達かな？」

そんな私達の前に、ブロンドの髪を揺らしながら突然現れた可憐な美女。

「あ……か、楓さん？」

その瞬間、先程のキスが鮮明に浮かび上がり、変に緊張してしまった私は、つい声が裏返ってしまう。

恵梨香に至っては、予期せぬ彼女の登場に顔が思いっきり引き攣っていた。


「ねえ今時間ある？ちょっとあたしとお茶しない？」

しかし、楓さんは私達の反応を全く気に留めることなく、まるで街中の下手なナンパ屋みたいな誘い文句で満面の笑みを向けてくる。

「えっと……あの……」　

あとは帰るだけなので、私は彼女の誘いを断る理由は特にないけど、恵梨香はどうなのか。

心配になり顔色を伺おうとした途端、いきなり楓さんに手首を掴まれ、度肝を抜かれる。

「すぐそこに美味しいケーキ屋さんがあるの。ちょっとだけだから、行きましょ」

そして、そのまま有無を言わさず強引に引き摺られ、私達はあれよあれよと言う間に隣にあるケーキ屋へと連行されてしまったのだった。