◇◇◇




「ごめんね。送ってあげられなくて」

一通り用事を済ませ、帰路に着くためロビーまで戻ると、入り口まで見送りに来てくれた海斗さんは申し訳なさそうに頭を下げる。


どうやら、これから有名なスタイリストさんが来るそうで、積もる話が色々とある海斗さんは残り、私達は先に帰ることにした。

「大丈夫です。ここは駅からも近いですし、恵梨香と寄り道してから帰るので、気にしないで下さい」

「そっか。それじゃあ、あんまり遅くなっちゃダメだよ?」

そう言うと、海斗さんは柔らかい笑みを浮かべて私の頭を優しく撫でてくれた。

頭を撫でられるのはこれでもう何回目となるのに、一向に慣れない私は相変わらず頬がじんわりと熱くなってくる。


「……いいなぁ、加代」

それから海斗さんに別れを告げ、ビルの外に出たところで、隣からぽつりと聞こえてきた呟き声。

「あのカイトに心配されて、しかも頭まで撫でてもらえるなんて、超愛されてるじゃん」

振り向くと、何やら恨めしそうにジト目でこちらを眺めてくる恵梨香の圧に押され、私は若干気後れしてしまう。

「それは海斗さんが優しいから。……何て言うか、その……」

確かに、同居人とは言え、ここまでして貰えるのは本当に贅沢過ぎる話なのかもしれない。

それも全部海斗さんの性格からなんだろうと思っていたけど、それ以上に何か熱いものを感じる時がある。


慈悲深く見守られているような。

それは、まるで……。