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待ち合わせ場所である近くの小さな公園前に停車している、一台の黒い車。


私は助手席側の窓から中を覗き込むと、携帯を耳に充てたまま何やら真剣な表情で海斗さんは誰かと話している。

そして私達の存在に気付くと、後部座席の方を指し、中に入るよう合図を送ってきたので、私達は通話の邪魔にならないように、そっとドアを開けた。


「……はい。後三十分位で着きます。……はい、すみません、それではまた後程」

ようやく通話が終わり、海斗さんは携帯をポケットにしまうと、小さくため息を吐いて、こちらの方へと振り返った。


「遅くなってごめんね。今日中に仕上げなきゃいけない課題がなかなか終わらなくて」

そう言うと、海斗さんはそのまま車のエンジンを起動し、サイドブレーキを引いてから車を発進させる。

「もしかして、今の電話は事務所からですか?」

「うん。本当は先に見せたいものがあったんだけど、これじゃあ直ぐスタジオ入りになっちゃうかな」

会話を聞く限りだと少し切羽詰まっている状況に、私は心配になって尋ねてみると、海斗さんは苦笑いを浮かべながらアクセルを軽く踏み込んだ。


大学とモデルの掛け持ち。

しかも、海斗さんは人気絶頂のモデルだから、おそらく仕事量も多いはず。

これだけ忙しいと、確かに彼女をつくる余裕なんてないのかもしれないし、それよりも、彼の体調面の方が気になってしまう。