話は遡ること数時間前。


今週から始まった早朝の文化祭準備に、私は今日も寝ぼけ眼を擦り被服室の扉を開いた時だった。

まるで待ち構えていたように、入り口前で私を迎えてくれたクラスメート達。

一体何事かと首を傾げた矢先、クラスメートのとある爆弾発言に私の頭は一気に冴えた。


それは……


「ねえ、山田さんって星南高の早川先輩と付き合ってるの!?」

そんな突拍子もない話に返す言葉がなく、暫くその場で固まっていると、図星だと思われたのか。次から次へと容赦なく襲いかかってきた尋問の嵐。


「やっぱり本当なの!?なんか試合の後早川先輩が山田さんの事探してたの見た人がいるって聞いたんだけど!?」

「しかも、二人の関係がどうのって話もあるんだけど!?」

「星南高の早川先輩って、もはやスター過ぎて全然近付けないのに、どうやって知り合ったの!?」

容赦なく攻めてくるクラスメートの圧に、私は混乱しながら今にも潰されてしまいそうになる手前。ふと蘇ってきた昨日の記憶。

そして脳裏に浮かんできた紺野さんと、バスケ部員達の顔。


間違いない。

話がここまでややこしくなったのは、全てあの人達が元凶だ。


そう確信した途端、まるで肩に重石がのしかかってきた気分になり、軽い目眩が襲う。

確かに、あの場では私達の関係をはっきり言えなかったので、そう捉えられても可笑しくないかもしれない。

けど、昨日の今日でそんな話を言いふらすなんて、幾らなんでもあんまりなのではと。

次第に怒りがふつふつと込み上がってきて、私は思わず拳を小さく握りしめた。