「あのさ、後つっかえてるんだけど」

すると、突如横から響いてきた低い声。

その声に私はまるでロボットのようなぎこちない動きで視線を向けると、そこには額に汗を光らせながら、片手にタオルを握っている岡田君が立っていた。

「ごめんね祐樹」

岡田君の姿を見るやいなや、表情が一気に晴れ、まるで所定の位置に戻るように隣へと駆け寄る紺野さん。

その光景に胸の奥がちくりと痛む中、岡田君は場違いな私の存在に驚いたようで、目が合った途端一瞬だけ動きが止まった。

しかし、それ以上にもっと場違いな俊君に気付くと、何故だか暫しの間黙って彼を凝視する。

心無しか若干気不味い空気が流れているような気もするけど、何はともあれ彼を紹介するにはまたとないチャンス。

けど、如何せんこれだけギャラリーがいると、とてもじゃないけど打ち明けることなんて出来ない。

「……あ、あの私達はそろそろこれで。……俊君、行こう」

仕方がないので、ここは一旦退散しようと。
私は俊君の服を軽く引っ張り、この場を離れようと催促する。