「……あ」

すると、向こうもこちらに気付いたのか。

先程まで部員達と親しげに話していた表情が、私と目が会った瞬間急に険しくなった。 


「何?なんか用?」

あの笑顔はどこへやら。

敵意丸出しで私を睨み付ける紺野さんに、周りにいたバスケ部員達は、私達を興味津々に眺めながら脇を素通りしていく。


「……え、えっと……」

誤解だと即答すればいいものの。
咄嗟の言い訳が思い浮かばず、しかも、相手を抑えつけるような鋭い眼差しに怖気付いてしまい、口が上手く回らない。


「まさか、祐樹のこと待ち伏せてんの?」

「はい!?」

すると、予想だにしていなかった紺野さんの一言に、思わず声が裏返ってしまった。

「あんた急に何なの。今まで一切近寄ってこなかったくせに、祐樹と話せるようになってから調子に乗ってない?」


「あ……あの……」


しかも痛い所を突いてきたことに吃っていると、それが図星だと思われてしまったのか。

こちらの言い分を全く聞こうとせず、ぐいぐいと迫ってくる紺野さん。


確かに、こんな人気のない洗い場で一人突っ立ているのは明らかに不自然だし、そう思われても仕方ないかもしれない。

けど、誤解は誤解なので、それをはっきり伝えようと口を開いた矢先だった。