神様、お願い!

絶対絶命のピンチに、私は瞳を固く閉じて必死に俊君の勝利を願う。

 
すると、卓越したスピードで、誰よりも早くボールに追いついた俊君は、勢い良く体を地面に滑らせる。

「なっ!?」

そして、上手いこと相手の足に触れず強奪に成功したのか、審判のホイッスルは鳴らずそのまま試合は続行され、ボールは明後日の方向へと転がっていく。

その溢れ玉に即反応したのは星南高チームで、ボールをものにした瞬間、勢い良く敵陣へと攻め込む。

俊君もその場から立ち上がり前線へと突き進むけど、先程のスライディング技で片足が擦り切れて血が流れていた。

「俊、無茶するな!お前さっきのファウルで右足やられたばかりだろ」

俊君の脇を並行して走りながら、滴る血に視線を向けてチームメイトが一喝する。

「無茶してねぇよ、俺は全然平気だ!」

それを跳ね除けた俊君は、怪我をものともしない毅然とした態度で真っ直ぐゴールを見据える。


その姿に、この前ベランダで語っていた俊君の顔がフラッシュバックした。


“後悔したくないから、ひたすら足掻いている”

その言葉通り、俊君は自分の夢に向かって迷うことなく信じて突き進んでいる。

あの時見せてくれた揺るがない意志を、こうしてしっかりと具現化している。

それを目の当たりした私は、暫く瞬きも忘れて俊君の後ろ姿を目で追った。