試合時間は後半残り二十分。

文化祭の準備のせいで、大分時間が過ぎてしまったことに申し訳なさを感じながら、私は瞬きをすることを忘れて試合を凝視する。


黒と赤のユニフォームが入り混じる中、果敢に最前線で攻め込む様子を見ると、俊君のポジションはおそらくフォワードなのだろう。

敵が隙を見せれば、すかさずボールを捕らえ、機敏に動きながら前へと突き進む。

その合間に脇から容赦なく襲いかかる敵の攻撃を、するりと華麗なドリブルで交わして、敵チームのゴールへと果敢に攻め込んでいく俊君。

けど、うちも強豪校と謳われているだけあり、そう簡単にゴールを許すことはせず、俊君の行手を阻み続ける。

ゴール手前で繰り広げられる相手選手との攻防戦。

なんとかそれを交わそうとするも、俊君の動きに瞬時に反応して隙を狙う。

さっきまで難なく敵の攻撃を交わし続けてきた俊君を足止めさせているということは、きっとあの人も相当な実力を持っているのだろうと。

私は固唾を飲みながら、ボールの行末を見守っていると、相手選手の足が絡みつき、反動で俊君の体が強く地面に打ち付けられた。


次の瞬間、女子生徒達の割れんばかりの悲鳴と同時に、けたたましく鳴り響く甲高いホイッスルの音。

試合はそこで中断され、痛そうに足首を掴んで疼くまる俊君の元にチームメイトが慌てて駆け寄って来た。


「おい、俊大丈夫か!?もしかしたら捻ったんじゃないのか?早くマネージャーの所に行った方が……」

心配そうに手を差し伸ばしてくるチームメイト達。
しかし、俊君はその手を払い退け、勢い良く立ち上がった。


「何でもねえよ。俺は大丈夫だから、このまま突っ走るぞ」

そして毅然とした態度で笑顔を見せるも、どこか引き攣っているようにも見えて。

出来ることなら私も今直ぐに駆けつけたいところではあるけど、それが叶えられず、ただ傍観しているだけの現状が歯痒くて、フェンスを握る手に力がこもる。