あっ、いた。
視線の先には、真っ黒なユニフォームを着てフィールドに立つ俊君。
頬を伝う汗を服の襟で拭い、ひたすらボールの動きを見据えながら全速力で走っている姿はとても勇ましくて。
自由自在にボールを操るテクニックは素人が見ても無駄がないと思え、そして何よりも格好良い。
それ故に、俊君がボールを受ける度に黄色い歓声は更なる激しさを増して、うちのチームの声援を一瞬にして掻き消していく。
自分達の学校なのにアウェイ感が半端ない状況下。我がチームを気の毒に思いながら、私はフィールド脇に設置された得点ボードにちらりと視線を向けた。
只今の試合は1対1の同点勝負。
そういえば、うちの学校も県内ベスト4の中に入る強豪チームだということを、今更ながらに思い出す。