「どうしたの?」

暴れる心臓を押さえながら首を傾げると、何やら真顔でこちらを凝視してくる岡田君。


「あのさ、この前聞きそびれてたんだけど。あの時公園で何してたんだ?」

「え?」

すると、何を言われるのかと思いきや。
まさかこのタイミングであの時の事に触れられるとは予想だにしていなかったので、私の頭は一瞬にして真っ白になった。

「あの……、ちょっと野暮用で!」

流石に今ここで全てを打ち明けることは出来ず、上手い言い逃れが全く浮かんでこない私は、仕方ないので無理矢理押し通すしかない。

「……あっそ。まあ、いいわ。それじゃあな」

けど、そんな答えになっていない私の返答を意外にもあっさり受け入れてくれた岡田君は、これ以上追求することなく、そのまま背を向けて通路口へと行ってしまった。

これまた予想外の反応に、私は呆気にとられながら、暫く彼の後ろ姿を眺め続ける。

そして、何故岡田君もあの場所にいたのか。

自分も理由を聞きそびれたままだということに気付いたけど、そこはお互い様ということで。

そうこうしていたら約束の時間はとっくに過ぎていて、私も慌ててその場から駆け出したのだった。