”それなら、紺野さんとの関係は?”

その時、頭の中でふと浮かび上がってきたもう一つの疑問点。 

というか、何よりもそれが今一番確かめたいことであり、一瞬喉まで出かかった言葉を、私は思い直して一旦引っ込めた。


ダメだ。

今はまだそこまで聞いてはいけない。

というか、聞けない。


聞いてしまえば、それこそ怪しまれるし、何よりも怖過ぎてその先に行くのはまだ無理。

そうなると、この悶々とした気持ちは何時まで経っても晴れることがない現状に、私は密かに肩を落とす。

それから、何気なく玄関前の壁掛け時計に目を向けると、約束の集合時間まで残り僅かだということに気付き、慌てて踵を返した。

「それじゃあ、私そろそろ行くね。岡田君、練習頑張って」

本当ならあともう少しだけ側に居たかったけど、衣装係のリーダーになってしまった以上遅れるわけにはいかず。

私は後ろ髪引かれる思いに、別れを告げてその場から立ち去ろうとした途端、突然手首を掴まれ、反動で体が後ろへ傾く。