「恵梨香、もしかして怒ってる?」
いつもなら、“そんな大事なこと、もっと早く教えなさい!”って一喝されるのに、何も返答が来ないこの状況が何だか心配になり、怖ず怖ずと尋ねてみる。
「んなわけないでしょ。まあ、かなり急展開だったからちょっと驚いたけど。でも、ようやく念願の岡田と再会出来たんだし、こんな喜ばしいことはないよ……」
すると、はたと我に返った恵梨香は直ぐに笑顔になってそう答えてくれたけど、何処かぎこちなさが残っていて。
それが一体何なのかよく分からず、不安気な目を恵梨香に向ける。
そんな私の視線に耐えかねたようで、恵梨香は目を泳がせた後、深い溜息を一つ吐いた。
「実はね。あたし加代から紺野の話を聞いて気になったから、周りに聞いてみたの。そしたら……」
何故か途中で言葉を詰まらせてしまい、そこから嫌な予感がしてならない私は、思わず胸元で拳を握る。
何だかその先を聞くのが怖くなって、知りたいような。知りたくないような。
複雑な心境に駆られながら、徐々に早くなる鼓動を抑えて話の続きをじっと待つ。